自分の構成要素としての読書履歴

例えば就職のために履歴書を書く。そのときに過去に所属していた学校、団体を埋めていって特技も書かなくてはいけない。もし資格があれば行数が稼げる。転職の場合は関わったプロジェクト単位で書いていく場合もある。 人によってスラスラと書けて誇らしげになる場合もあるし、逆に行数が少なくひねり出すのに苦労するかもあるかもしれない。いずれにしても埋めた履歴書は一面的とは言えその人のことが分かるものになる。書いた本人にとっては改めて「自分」というもの、つまりアイデンティティの再発見に繋がる。履歴書を書くというのは滅多にすることではないし、私も転職の際に書いたときはなかなか新鮮な気持ちになった。


履歴書で分かることは表向きな面が強いけど、内面的な構成要素を知るためのとても有効な方法の一つが読書履歴を眺めることだと思う。例えば個人的な本棚を見れば履歴書とは違う意味でその人の関心事、言い換えればその人の「構成要素」が分かる。これは他人を知る場合と自分のことを改めて知る場合の両方に当てはまる。ここでは自分自身を知ることについて書く。


自分の本履歴を知る最初の手段は部屋の本棚だ。だけど棚には時間軸の情報は含まれていないし、各本の重みについてもわからない。図書館を頻繁に利用する場合は、家の本棚の内容は履歴のごく一部でしかなくなる。つまり情報がだいぶ欠落する。


家の本棚の場合は、整理の際が自分を見直すよいきっかけになる。例えば本棚のスペースを限定するか100冊など上限を決めておき、定期的に断捨離すればその度に自分の現在の関心事、価値観と向き合うことになる。


他には長期間過ごすネットのない島に持っていきたい本を選ぶという話もある。リュックに入る程度なのでせいぜい10冊程度になるだろうか。仮想的な取り組みだけどこれをすると大事な本がさらに絞られる。


前に「読書メーター」というオンラインの読書日記でありSNSのことを書いた。これを続けていれば実際の本棚にはない登録日として時間情報も残るし、レビューも書いておけば各本の重みもわかる。読んだ本をその度に登録していくことは必要だけど、慣れてくれば感想を書くことは楽しくなるので手間とは思わなくなる。


読書メーターの場合は、年末に一年に読んだ本の「おすすめランキング」というのを作成し他人に公開する機能がある。この作業を毎年するのが楽しみになっている。これは「本棚」という登録した本を分類する機能の応用となる。この記録は5年続けている。


読書メーターの本棚一覧はこちら


また個人的に「おすすめランキング」とは別に島に持っていきたい本を意識したその年のマイセレクト本棚も作成している。「おすすめランキング」はその年に読んだ本限定(平均100冊程度)だけど、「セレクト」はこれまで登録している本全体(現在1000冊近く)から選ぶ。そのため何年も続けて選ばれる本も出てくる。こちらは3年続けている。「セレクト」は新たな本が加わっていくし何冊かは外れていく。加わる本は新しいものばかりではなくだいぶ前に読んだけど改めて見直して加わるものもある。外れた本は確かに自分の中で重みが下がったという意味になるが、感謝を込めて卒業という意味合いもある。自分の中でその内容がかなり既知のものとなったのだ。例えば以前は行動経済学や進化論が入っていたけど、今は当たり前のものとなりセレクトにならない。


元々はただのリストとしての記録とアウトプットの練習のために始めた読書メーターだったが、長く続けると自分を再発見できるという発見を最近した。「履歴」と呼べるものになるにはある程度期間を積まなければいけないけど、その価値はあると思うのでおすすめしたい。


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